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白樺樹液生産者・柳生好輝さんの「しぜん」。

2026.07.17

白樺樹液生産者・柳生好輝さんの「しぜん」。

柳生好輝 / 白樺樹液生産者

北海道美深町仁宇布・松山農場で、羊の飼育や羊肉の仕事を中心に、春には白樺樹液の採取に携わる。小樽生まれ、美深町育ち。

小松 今日はよろしくお願いします。お父様とは何度かお話ししたことがあるのですが、好輝さんご本人とこうしてゆっくりお話しするのは初めてですね。まず、今のお仕事について伺いたいのですが、年間を通してメインでされているのはどんなお仕事なんですか?

柳生 メインは羊ですね。年間を通して、基本的には羊の仕事をしています。

小松 羊肉の卸などをされているんですよね。白樺樹液の採取は春の時期だけですか?

柳生 そうですね。樹液は年のうち二ヶ月くらい。基本的には4月、5月がメインです。

小松 本当に短い期間なんですね。好輝さんは二代目ということになりますが、今おいくつですか?

柳生 39歳です。

小松 僕が41歳なので、ほぼ同世代ですね。家業には最初から入られたんですか?

柳生 いえ、学生を終えたあとは保育士をしていました。

小松 保育士ですか!

柳生 はい、保育学科を卒業して、三年間保育士をしていました。ただ、あるとき父から連絡があって、メインで働いていた人がそろそろ辞めそうだと。もともといつかは戻ろうと思っていたんですが、思ったより早く戻ることになりました。

小松 そうだったんですね。保育士さんだったというのは少し意外でした。でも、もともと家業に戻ることは考えていたんですね。

柳生 そうですね。仕事内容のイメージは大体ついていたので、戻ること自体に抵抗はあまりなかったです。

小松 好輝さんは、生まれも美深なんですか?

柳生 生まれは小樽です。父が小樽で仕事をしていて、僕が小学校4年生のときに、羊をメインに進めていきたいということで一家で美深に引っ越してきました。それからずっと美深です。

小松 小学生の頃から、羊の仕事は身近にあったんですね。

柳生 そうですね。こちらに来た年から、父から時給60円をもらいながら、羊の牧場に行っていました。ひとつの建物を任されて「ここの羊の飼育はお前に任せる」と言われていました。

小松 時給60円(笑)小さい頃から仕事の風景を見ていて、保育士を経て戻ってきた。そういう流れだったんですね。実際に家業に入ってみると、イメージと違う部分もありましたか?

柳生 全然違いましたね。樹液も羊と同じくらいの年数を見ていたので、仕事のイメージは持っていたんですが、いざ入ってみると違いました。自然の中だからストレスを感じずに仕事ができるのかなと勝手に思っていたんですが、全く違いましたね。

小松 ストレス、ありましたか。

柳生 ありましたね。入って最初の2、3ヶ月で、体重が15キロくらい落ちたんです。

小松 え!それはかなりですね。肉体労働もありますが、気持ちの面も大きかったんですか?

柳生 そうだと思います。当時はがむしゃらにやっていて気づかなかったんですが、あとになって、気持ちの面でも追われていたんだなと思いました。

小松 自然の中のストレスというと、具体的にはどういうものなんですか?

柳生 慣れていない仕事だったこともありますし、責任が全部のしかかってくる立場になったことも大きいです。お客様からご注文をいただいて、必要な量が採れなかったらどうするか。そういう不安の中で過ごしていたんだと思います。

小松 自然相手ですもんね。毎年同じではないですよね。

柳生 そうですね。期間も限られていますし、本当にそのときどきで変わります。

小松 樹液の出方も、年によって変わるんですか?

柳生 年による違いもありますが、年々、採取時期が早まってきている感じがあります。温暖化の影響をこういう仕事をしていると強く感じますね。僕が15年くらい前に戻ってきたときは、4月いっぱい採れていたんですが、今は20日くらいで切り上げないといけない感じです。

小松 そんなに早まっているんですね。

柳生 そうですね。美深町の白樺樹液まつり自体も、2、3年前から1週間ほど早めています。雪がなくなってしまうので。

小松 実際に採り始めるタイミングは、どうやって決めるんですか?

柳生 何本かの木に穴を開けて、毎日チェックしています。全部の木は見られないので、印をつけた木の樹液の出方を見て「よし、今だ!」というところでチューブを挿していきます。

小松 毎日、森を見に行くんですね。

柳生 そうですね。仕事場がこの仁宇布(ニウプ)地区なので、毎日ここにいます。森の中に入って木の状態を見て、現場のおじさん達に設置をお願いします、という感じで進めています。作れるものではなく、自然からいただくものなので。タイミングを外してしまうと、質のいい樹液が採れないんです。そこが難しいですね。

小松 自然との関わりというと穏やかなイメージもありますが、実際にはかなり現実的な判断の連続なんですね。

柳生 そうですね。自然との戦いのような部分もあります。

小松 それから、白樺樹液の採取をしている方たちも、だいぶ高齢になってきているように思いますが、人手の確保はやはり大きな課題ですか?

柳生 大きいですね。年々、本当に人がいなくなってきています。現場で樹液を採ってくれる方たちも、若い方が60歳くらいで、一番上は80歳を超えています。

小松 自然の仕事というと、自然だけが相手のように見えますが、実際には人の問題も大きいですよね。 他の農家さんも後継者や人手の不足に悩んでいるとよく耳にします。 大変な状況だとは思いますが、今後も白樺樹液は続けていっていただけますよね?

柳生 そうですね。これは大事な仕事だと思っているので、続けていきたいと思っています。

小松 続けるためには、今ある森をどう見ていくかということも大切になってきますよね。

柳生 そうですね。毎年同じ木から採っているんですが、木にも寿命があります。今使っている林の木たちも、寿命に近づいてきているところがあって、そこをどうしていくかは大きな課題です。

小松 白樺の森を長く残していくには、今ある木だけではなく、次の世代の木のことも考えていく必要があるんですね。

柳生 そうですね。実際に、企業さんが植林に取り組まれている場所を、こちらで管理しているところもあります。 ただ、白樺は植えたからすぐに使える木になるわけではありません。僕が生きている間に樹液を採れる木になるかというと、難しいかもしれない。でも、次の世代のことを考えると、そういう森づくりの視点は必要だと思っています。

小松 何十年も先を見て考える仕事なんですね。 ナチュラルアイランドも、白樺樹液を分けていただいている立場として、森の恵みを使わせていただくだけでなく、将来的には植林や森づくりにも何らかの形で関わっていきたいと考えています。すぐに簡単にできることではないと思いますが、まずは現場のことを知ることが大切ですね。

柳生 そうですね。新しい採取場所を探すことも考えていますが、なかなか簡単ではありません。白樺がまとまって生えていて、ある程度平らな場所で、作業ができる環境となると限られてきます。 それに、植えた木も鹿に食べられてしまうことがあります。せっかく植えても、次の年に見に行ったらなくなっていることもあるんです。電気牧柵などの対策もしていますが、管理を続けていくのはなかなか難しいですね。

小松 木だから自然に育つ、というほど単純ではないんですね。

柳生 僕も最初はもう少し簡単にいくかなと思っていました。でも、植えて終わりではなく、その後も見ていかなければいけないんだなと感じています。

小松 これから白樺樹液を、どのように広げていきたいと考えていらっしゃるんですか?

柳生 じつは、広げるという考え方はあまりないんです。父もそうなんですが、広げなくてもいいから続けていきたいという思いが強いです。細々とでもいいから、やめずに持続していきたい。

小松 なるほど。

柳生 採れる量も限られていますし、工夫だけでは補えない部分もあります。だから、ある分をどううまく使うか。今、飲料としてうちから発売している「森の雫」も、絶やさずに次の世代へ渡していけたらいいなと思っています。

小松 ナチュラルアイランドとしても、毎年白樺樹液を分けていただいています。私たちができることは、いただいた自然の恵みを大切に生かし、魅力ある製品としてお客様に届け続けることだと感じています。 同時に、白樺の森がこれからも続いていくために、私たちにどんな関わり方ができるのかも考えていきたいです。植林や森づくりは、始めれば終わりというものではなく、長く見守ることが必要な取り組みだと思います。だからこそ、まずは柳生さんたちの現場の声を聞きながら、無理のない形で前向きに考えていきたいですね。

柳生 そうですね。こちらも、質のいい樹液をできるだけ出せるように考えていきたいと思っています。

小松 ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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